「ツインレイ」という言葉が、ここ数年、三十代の恋愛を少し縛っているように見える。

「彼はツインレイだと思うんです。だけど、今は連絡が取れなくて」 「再会したいんですけど、いつ来ますか?」 「サイレント期間が長くて、辛いんです」

——占いの相談でよく挙がる悩みとして、こうした言葉がしばしば紹介される。

ツインレイという考え方そのものを否定するつもりはない。けれど、その言葉を握りしめるほど、目の前の現実の恋愛が動かなくなる、ということはありそうだ。この記事では、「ツインレイ」という言葉に縛られずに次の関係へ進むために、やめてみたいことを考えてみたい。

著者名の藤本環は、本メディアの創作上のペルソナです。実在の占い師による鑑定や取材の経験談ではありません。以下に登場するE子〜G子は、よくある悩みをもとにした架空の人物です。詳しくは運営者情報をご覧ください。

E子の話、34歳、青山の広告代理店

たとえば、こんな人を想像してみてほしい。E子(架空の人物)は、青山の広告代理店でアカウントプランナーをしている。

「ツインレイと思う相手がいる」。会社の取引先で出会った男性で、5歳年上、既婚者だった。

「絶対にツインレイなんです。会った瞬間に分かりました」

——その日から、彼女は5年、その人を待つ。

毎月のように占いに通い、タロットを引いてもらう。「彼はいつ離婚しますか」「再会のサインはありますか」「サイレント期間はあと何ヶ月ですか」。答えが気に入らない日には「もう一度引いてください」と頼む。

5年経って、E子は39歳になり、その男性は離婚しなかった。

「私、もう疲れました」

そう言って、彼女は占いから半年離れる。その間に、新しい人と付き合い始める。年齢が近くて、独身で、広告業界で働く人だ。

「ツインレイじゃないんです、たぶん」と、E子は笑う。

「でも、私と話してくれるし、約束を守ってくれるし、休日に会えるんです」

——それで、十分なはずだ。

F子の話、31歳、品川のIT企業

次は、F子(架空の人物)。品川のIT企業でプロダクトマネージャーをしている。彼女が気にしているのは、いつも「サインの確認」だ。

「昨日、彼の名前を3回見たんです。これはサインですか?」 「夢に出てきました。これってツインレイのテレパシーですか?」 「11:11を見ました。これも?」

——タロットを引いても、答えは「これはサインかもしれないし、そうでないかもしれない」以上にはならない。

ある日、F子はこう思う。

「もう疲れた。サインを探すのが」

その日が、彼女が変わる日になる。

F子はそれから、「サインを探す」のをやめる。スマートフォンの待ち受けからエンジェルナンバーを外し、彼の名前を検索する習慣を捨て、夢日記をつけるのをやめる。

しばらくして、F子は同じ会社の同期と付き合い始める。その人は、何のサインも持っていない。普通の人だ。

「サインを探していた時間って、彼を見ていたわけじゃなかったんですよね」とF子は振り返る。「自分の不安を、彼のサインのせいにしてただけで」

G子の話、36歳、麻布十番のヨガスタジオ経営

三人目のG子(架空の人物)は、麻布十番でヨガスタジオを経営している。30代の前半、彼女は「ツインレイ」の概念に深く入り込んでいた。高額な講座を受け、ヒーラーに通い、ツインレイ仲間とSNSでつながった。

「あのころは、ツインレイのことしか考えていなかったです」と、G子は今は笑って話す。

転機は、受講していた講座の主催者の言動に、どうしても納得できないことが起きたときだ。

「ツインレイを語っている人が、これか、と思いました」

G子はそこから、「ツインレイ」という言葉を自分の生活から外す作業を始める。SNSのアカウントを変え、コミュニティを離れ、講座のテキストを処分する。半年かかる。

「言葉を捨てたあと、ようやく、自分が本当は何を求めていたかが見えてきたんです」

いまのG子は、同年代の男性と結婚して、2人で小さな家を借りている。夫は、ツインレイという言葉を知らない。

「運命の人かどうかは、もう確認しないことにしました」と、彼女は言う。「確認する代わりに、毎朝コーヒーを淹れる人と、淹れない日があるかどうかだけ見ています」

再会した女たちが、共通してやめた3つのこと

3人の例に共通するのは、「ツインレイと再会する(もしくは、再会の概念を超えて新しい関係を始める)」前に、やめていることがある、という点だ。

整理すると、こうなる。

①

「サインを探す」のをやめた

11:11、エンジェルナンバー、夢、シンクロ。サインを探し続けるのは、相手を見るのではなく、自分の不安を確認する動作になりやすい。

②

「サイレント期間」を待つのをやめた

連絡が来ない日々を「魂の成長期間」と呼ぶ習慣。それを名付けると、待つことが正当化されてしまう。名前を捨てると、待たない選択ができるようになる。

③

「鑑定で確認する」のをやめた

タロット、占い、ヒーラー、講座。何度確認しても答えが固まらないものを、何度も確認しに行くのをやめる。自分の判断に戻ったとき、関係は動き出しやすくなる。

ここに**「再会のサインを探さない」「待たない」「確認しない」**という、ツインレイの教えと真逆のことが並んでいる。けれど、次の関係へ進むきっかけは、この3つをやめた後にやってくることが多いのではないだろうか。

タロットを扱う立場からこう書くのは、気が引ける。けれど、**タロットは「同じ問いを何度も引くための道具ではない」**とよく言われる。1回引いて、出たカードを抱えて生活に戻る。その繰り返しの間に、関係は動く。

なぜ「ツインレイ」という言葉が手放しにくいのか

数秘術と心理学の両方の観点から、もう少し書く。

ツインレイという言葉が手放しにくいのは、その言葉が「会えないこと」「辛いこと」「理解されないこと」を特別なことに変換するからだ。

普通の片思いは、辛い。連絡が来ないのは、辛い。けれど「ツインレイのサイレント期間」と名付けた瞬間、その辛さは「魂のプロセス」になる。痛みが、痛みのままではなく、意味のあるものになる。

意味があるものは、手放しにくい。手放したら、自分が積み上げてきた数年が、ただの片思いになってしまうから。

E子が5年間離れられなかった理由も、F子がサインを探し続けた理由も、G子が講座に通い続けた理由も、ここにある。辛い時間に意味を持たせ続けないと、過ごした時間が無意味になる気がする——その恐れが、ツインレイという言葉を手放させない。

けれど、次へ進む人は、その恐れを越えていく。「5年間ツインレイを待っていたのではなく、5年間自分を見ていなかっただけ」と認めるのは、痛い。でも、認めたところから、次の関係が始まる。

「彼女がツインレイにハマっている」と気づいた家族・友人へ

ここから、自分のためではなく身近な女性がツインレイの概念で苦しんでいるのを見ている家族・友人に向けて少し書く。

母親・姉妹・親友・パートナーが、明らかに高額な講座にお金を入れている、不倫関係から抜けられない、現実の生活に支障が出ている——そのとき、外から「やめなよ」と言っても、なかなか届かないことが多い。

届きにくい理由は前段に書いた通り。過ごした時間に意味があると思いたい気持ちは、外からの否定で揺らぎにくい。揺らぐと、過ごした時間が無駄になるからだ。

代わりに、できることが3つある。

  • 言葉を変えない。「ツインレイ」を「妄想」「思い込み」と言い換えない。本人が使っている言葉のままで、隣に座る。
  • 代わりの楽しみを増やす。鑑定や講座以外の時間に、一緒にご飯を食べたり、温泉に行ったり、運動を始めたり。占いコミュニティの外に居場所を作る。
  • お金の動きだけは見ておく。高額講座、繰り返しの鑑定、ヒーラーへの送金。家計に深く影響する金額が出ているなら、その点だけは家族として早めに把握しておく。被害が大きくなる前に消費生活センター(188)に相談する選択肢もある。

「ツインレイ」を信じている人を無理に変えようとしないこと。信じる人の世界が変わるのは、本人がもう疲れたと言えるときであることが多い。それまでに家族ができるのは、本人が戻ってきたときに、戻れる場所を残しておくことだ。

占いとの付き合い方の小さな話

占いやタロットは、月に何度も通うものから、半年に1回、年に1回と間隔が空いていき、やがて必要なくなる——そんな付き合い方が、ひとつの理想だと思う。

占いの役割は、依存させることではない。占いに頼らなくても自分の判断ができるようになる、その日までの支えであればいい。

占いに確認しに行かなくなったことは、もしかすると、前に進めた証拠なのかもしれない。確認しなくても、生きていける。それが、次の関係を始めた人の顔だ。

最後に、今日この記事を読んでくれた人へ

もしあなたが今、誰かをツインレイだと思っていて、再会を待っているなら——タロットも、占いも、講座も、半年だけ離れてみてほしい。

その半年で関係が終わるなら、それは終わる関係だった。続くなら、占いや講座がなくても続く関係だ。どちらにしても、半年の判断材料を、自分の生活が教えてくれる。

「ツインレイ」という言葉を手放した先に何があるかは、手放してみないと分からない。けれど、言葉を手放したあとに残る、それぞれの普通の関係のほうが、たぶん、運命に近い。

✦ この記事のまとめ

「ツインレイ」の言葉に縛られずに次へ進むために、やめてみたいのは「ツインレイかどうかを確認する作業」そのもの。

架空の3人の女性の例から、言葉を手放した先で起きうる変化を考える。誇大な再会論ではなく、現実の恋愛に戻るための話。