「去年より収入は増えたのに、不安は減っていない」

この相談が、いちばん多いかもしれない。

金額が増えれば安心するはずだ、と本人も思っている。思っているのに減らないので、自分の感じ方がおかしいのではないかと言う人までいる。

おかしくはない、と私は思っている。

不安は金額で決まっていない

白川は──私は暦と四柱推命を扱う仕事をしているので、この話を年に何十回もする──不安の量を決めているのは、金額そのものではないと考えている。

どこまで先が見えているか。

これで決まる。

来月の支払いしか見えていない人は、口座に何が入っていても来月ぶんの不安を抱える。一年先まで見えている人は、同じ残高でも落ち着いている。

見えている範囲の長さが、そのまま安心の長さになる。

増えた分は、たいてい生活に吸われる

収入が増えたとき、多くの人はまず生活を少し広げる。

家賃が上がる。外食が増える。サブスクが一つ増える。どれも小さいので、増やしている自覚があまり無い。

結果として、入りが増えたぶん出も増えて、見えている先の長さは変わらない

金額は増えた。距離は延びていない。だから不安も減らない。

以前お金の不安が出やすい口ぐせで書いたが、不安の言葉が減らないときは、生活の形が変わっていないことのほうが多い。

型によって、不安の出方が違う

四柱推命の財星の話を少し使う。

毎月同じくらい入る型(正財) の人は、金額の上下より、入り方が崩れることに不安を感じやすい。だから収入が増えても、増え方が不安定だと、かえって落ち着かなくなる。

波で入る型(偏財) の人は、来ている年に不安が減らない。次に来ない年が見えているからで、これは正常な反応になる。

どちらも、金額を積んで解決するものではない。入り方の形を自分で把握しているかどうかで変わる。

見える範囲を延ばす

やることは一つでいい。

一年ぶんの「必ず出ていくもの」を書き出す。

家賃、保険、税、通信、サブスク、年に一度の出費(車検、更新料、帰省、贈答)。金額まで正確でなくていい。時期と、だいたいの額が並んでいればいい。

これを一枚にすると、たいていの人は二つのことに気づく。

ひとつ、思っていたより先が読める。毎月の変動よりも、年に数回の大きい出費のほうが効いている。

ふたつ、不安の中身が特定できる。漠然と不安だったものが、「10月と3月がきつい」という形になる。

形になったものは、対処ができる。漠然としたものは、増やしても減らない。

年に一度でいい

これは毎月やるものではない。

月ごとに見直すと、細かい上下に目が行って、かえって不安が増える。

年に一度、区切りのいい時期に一枚作り直す。立春でも年度替わりでも、誕生月でもいい。決めた時期に、去年の一枚を出してきて、ずれを直す。

去年の一枚があると、今年の一枚は15分で終わる。

それでも減らないとき

一枚作っても不安が残ることはある。

その場合、不安の出どころがお金でないことがある。仕事の続き方、健康、家族の先行き。お金の形をして出てきているだけ、ということが実際にある。

見える範囲を延ばしても減らないなら、減らないという事実のほうが情報になる。そこで金額を追いかけ続けると、増えても増えても届かない。

暦は、この切り分けに使える。一年ぶんを並べて、それでも残るものが何かを見る。それだけでも、追いかける先が変わる。

今週やること

三つ。

ひとつ、一年ぶんの固定費と、年に一度の出費を一枚に書き出す。

ふたつ、いちばん重い月を二つ見つける。

みっつ、その二か月に向けて、いつから積むかを決める。

金額を増やす話は、この三つが終わったあとでいい。順番が逆だと、増えたぶんがまた見えない場所へ流れていく。

✦ この記事のまとめ

収入が増えても不安が減らないのは、不安の量が金額ではなく「先がどこまで見えているか」で決まるためです。

増えた分だけ生活が広がると、見える範囲は延びません。先に一年ぶんの支出を書き出すほうが、金額を増やすより効きます。