「夫の出世運」を見てほしい——占いの相談として、よく挙がるテーマのひとつだ。

「うちの夫、いつ昇進しますか」 「来年の異動で、海外赴任になりますか」 「役員になれる人ですか」

——どれも、よくある問いだ。

四柱推命の考え方では、こうした問いの答えを「夫の命式」だけでなく、問いかけている妻自身の命式からも読むことがある。

夫が出世するかしないかは、夫の仕事の積み重ねと、配属と、上司との縁が決める。けれど、妻がその出世運にどう関わるかで、結婚生活の質は大きく変わりうる。その線引きについて、架空の三組の夫婦の例をもとに考えてみたい。

著者名の白川珠代は、本メディアの創作上のペルソナです。実在の鑑定者による経験談ではありません。以下に登場するH子〜J子とその夫たちも、よくある悩みをもとにした架空の人物です。詳しくは運営者情報をご覧ください。

H子の話、42歳、麻布のタワーマンション

たとえば、こんな夫婦を想像してみてほしい。H子(架空の人物)は、麻布のタワーマンションに住んでいる。夫は外資系の金融に勤めている。結婚10年、子供はいない。

H子は、結婚と同時に勤めていた商社を辞めた。「夫の出世を全力で支えたい」というのが理由だった。

最初の数年は、よかった。夫はH子の家事と内助の功で、安心して仕事に集中できた。30代で部長になり、やがて本部長になった。

問題は、それから始まる。

夫が役員候補に名前が上がり始めたころ、H子はふと気づく。自分のための予定が、手帳からほとんど消えている。

四柱推命の見方でいえば、H子の命式が結婚前に示していた活発な動きは、結婚後の10年、夫の運勢に同化するように見えにくくなっている——そう読むことができる。

「夫の運勢を支えるために、自分の運勢を止めている」状態だ。

H子自身も、きっとこう感じている。

「もう、止め方しか分からなくて」

I子の話、38歳、青山のメーカー勤務

二組目のI子(架空の人物)は、青山のメーカーで働いている。夫は同年代の外資系コンサル。結婚5年、共働き。

I子の悩みは、H子と真逆だ。

「夫の昇進プレゼンの資料、私が全部チェックしているんです。これって支えすぎですか?」

四柱推命でいえば、たとえばI子の命式が夫に対して比肩(自分と同じ星)が強く出る組み合わせなら、本人と夫が似たエネルギーで競い合う関係と読む。夫の仕事に口出ししやすい傾向がある、ということだ。

「うちの夫、私が口出しすると、最初は反発するんですけど、結局直してくるんですよね」

では、直したあと、夫はI子に感謝しているだろうか。

「……してない、かもしれません」

支えすぎると、夫の達成感を奪ってしまうことがある。夫が成長する機会を、妻が先に持っていってしまう。短期的にはうまくいっても、長期的には夫が「妻なしでは決められない」状態になりかねない。

I子が、夫のプレゼン資料を見るのをやめたとしよう。最初のうちは、うまくいかないこともあるかもしれない。けれど時間をかけて、夫が自分で資料を仕上げられるようになっていく——そんな流れは、十分に考えられる。

「私が、いなくなったほうが、夫は伸びました」。I子がいつか、苦笑しながらそう言える日が来るかもしれない。

J子の話、45歳、広尾の歯科医師

三組目のJ子(架空の人物)は、広尾で歯科医院を経営している。夫は同年代の銀行員で、子供は中学生と小学生の二人。

J子の悩みは、出世運の話ではない。

「夫が、最近落ち込んでいて」

夫は、銀行で同期の中で出世が遅れている。家ではあまり話さなくなり、休日もぼんやりしている。J子は、夫を励ましたいけれど、何を言えばいいか分からない。

こういうとき、ひとつの考え方として、こんな提案ができる。

「夫を励ますのは、しなくていいです」

「励ます代わりに、自分の歯科医院の話をしてあげてください。今月、面白い患者さんがいたとか、新しい治療法を試したとか、そういう話を」

「夫の話じゃないんですか?」と、J子は不思議に思うだろう。

夫が落ち込んでいるとき、夫の話ばかりすると、かえって追い詰めてしまうことがある。J子が自分の仕事の話を、楽しそうにする。それを夫が横で聞く。それだけで、家の空気が少し変わる。

これは、四柱推命の理屈で言えば、配偶者の星に対する「印綬」(与える星)の動きと読める。直接の応援ではなく、自分の充実を見せることが、配偶者にとっての滋養になる、という考え方だ。

J子が自分の仕事の話を夫にし続けたとしよう。最初は無反応かもしれない。けれど、そのうち夫のほうから質問してくるようになり、やがて「俺も、自分から異動希望を出してみようかな」と言い出す——そんな変化も、あり得るのではないだろうか。

妻が「支える」ことの3つのパターン

3人の例を整理すると、こうなる。

①

自分を止めて支える

H子の例。夫の運勢を最優先にして、自分の運勢を停止させる。短期的には夫が伸びても、長期では妻の人生が空洞化しやすい。

②

先回りして支えすぎる

I子の例。夫の仕事に口出ししすぎる。夫の成長機会を奪い、長期では夫が自立しにくくなる。妻も疲れる。

③

自分の充実を見せて支える

J子の例。夫の話に乗りすぎず、自分の仕事や趣味の話を楽しそうにする。夫が「自分も動こう」と思う流れを作る。

①と②は、妻が支える主体になる動きだ。③は、妻が自分の人生を生きている姿を見せる動きだ。

四柱推命の考え方では、③の動きは命式の流れを滞らせにくいとされる。自分の星が動いているから、夫の星も連動して動く、という読み方だ。

「内助の功」という言葉の落とし穴

日本で長く使われてきた「内助の功」という言葉は、妻が自分を消して夫を立てる、というニュアンスで受け取られがちだ。

けれど、四柱推命の見方に沿って考えると、その逆が見えてくる。自分を消してしまうと、夫の運も結局は止めてしまいかねない。相手の運勢に同化することは「補助」とは言いにくい。同化は、両方の星の動きを止める。

「内助の功」を読み替えるなら、自分の星を動かし続けながら、夫の星と共鳴する動きだ。たとえばJ子のように、自分の歯科医院の話を楽しそうにする。それを夫が横で聞く。それは、夫を励ます動作ではないけれど、夫が動き出すきっかけになりうる。

「内助」という言葉を使うなら、**「内側にいながら、自分を生きている」**と読み替えるのがいい。

夫の出世を、妻はどこまで支えるべきか——3つの線引き

最後に、実践的な3つの線引きを書く。

ひとつ目:夫の判断には、口を出しすぎない。プレゼン資料も、転職の決断も、夫が決める。妻が代わりに決めない。聞かれたら答える、聞かれないなら言わない。

ふたつ目:夫の話を、夫の話で返さない。夫が会社の愚痴を言ったとき、解決策を渡したくなる。けれど、解決策を求めていないことも多い。「そうか、大変だね」で受け止めて、別の話題に移す方が、気持ちが軽くなることもある。

みっつ目:自分の生活を、楽しそうに見せる。仕事でも、趣味でも、友人との時間でも。妻が楽しそうにしている家は、夫にとっても帰りたくなる家になる。家庭がほっとできる場所であることは、外で力を出すための支えになる。

「夫の出世運を見てほしい」と思った日に

この記事は、おそらく夫の出世が気になる女性が読んでくださっていると思う。

だから最後に、ひとつだけ書く。

夫の出世運を見てほしいと思った日は、もしかすると、妻自身が自分の何かに迷っている日なのかもしれない。

夫の出世運の前に、自分の今月の運勢を見てみることを、おすすめしたい。自分の運勢に目を向けていると、夫の運勢の心配は、少し小さくなるはずだ。

四柱推命でも、暦でも、占いでも、何を使ってもいい。自分の星に手を伸ばす日が、結果として夫を支える日にもなる。

夫を支えるのは、夫の人生を生きることではなく、自分の人生を生きることから始まる。三組の夫婦の例は、そのことを考えるためのひとつの手がかりだ。

✦ この記事のまとめ

夫の出世運を妻が支えるとき、その線をどこに引くか。架空の3組の夫婦の例から、支える・任せる・距離をとるの境界線を考える。

妻が「自分の人生を夫に貸し出してしまう」瞬間は、支えようとした正しさの中に潜んでいる。境界線は、四柱推命の命式の相互作用から読むこともできる。